戸惑い


「いいかげんにしろッ!」

パシンとあたりに乾いた音が響いた。
先程まで賑やかだった食堂は一瞬にして静まり返り声のした方へ皆顔を向けた。
そこにはガンダムマイスターのロックオン・ストラトスと刹那・F・セイエイ。手を叩かれた状態のままぽかんとしている大人と猫が威嚇するみたいに目を吊り上げている子供。その2人の様子を見てまたかというふうに人々はまた賑やかさを戻しつつあった。
ロックオンは叩かれて少しヒリヒリする手を横目に見ると綺麗に赤い線が数本入ってた。視線を目の前の子供に移せば怒りからか少し上気してほんのり赤い頬と潤んだ瞳。そして睨み上げる目とオーラから気難しい猫みたいだ、とそう思った。

「わ、悪かったって。頭撫でたくらいでそんなに怒ることないだろ」
「うるさい!オレにもう構うなッ!」
「あ、おい刹那!」

あまり悪かったと思ってないような謝り方と毎回鬱陶しい程構ってくる彼にいい加減堪忍袋の緒が切れた。今まで必要もないから他人と触れ合いも馴れ合いもしてこなかったのに、ここ?ソレスタルビーイング?に来てから何かと構われる様になった。その慣れない温度に多少でも心地いいなんて思ってしまった自分にイライラがつのる。
刹那は呼び止める声に振り向かずそのまま食堂を出て行った。

「ロックオン、嫌われたんじゃない?」

その一部始終を見ていたアレルヤは食べかけだった食事の手を止めロックオンに顔を向けた。心なしかその目は笑っている様に見える。
ロックオンはアレルヤのその視線に耐えれずテーブルに突っ伏した。

「あれは嫌いになんかなってない、ただの照れ隠しだ…きっと」
「僕等より年上なのに、その姿子供みたいだよ」

突っ伏したままぶつぶつ呟くその姿はあまりにも子供っぽくて24の大人には見えない。

「今日は刹那の後追わないんだね」
「オレだって落ち込むときぐらいあるさ」
「そう」

アレルヤは残ったものを適当に口に入れると食器の乗ったトレイを手に立ち上がった。

「じゃあロックオンのかわりに僕が追いかけるよ」
「え、アレルヤ?」

トレイを返却口に返してそのままロックオンの後ろを通ってドアに向かった。
いつもならありえない彼の行動にロックオンは慌ててその後を付いていく。

「おい、いつもならそんなことしないのにどうしたんだよ?」

少し焦りながら横に並んだ彼を横目で見てアレルヤはフッと笑った。彼の目は自分を心配する言葉と裏腹に嫉妬が見え隠れしていた。

「(最初から追いかけていけば良いのに)」

まだ横で何か言っているロックオンを引き連れて刹那のお気に入りの場所に足を向ける。

後から刹那に総無視されても必死に構い倒すロックオンとアレルヤに餌付けされている刹那、そして自分の好感度を上げていくアレルヤがガンダム格納庫で目撃されるのだが、それはまた別のお話…。



fin.


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